スノコ床板のホントの話
公開日 2024/03/10 更新日
※2018年1月27日に公開した記事ですが、内容を追記して2024年3月10日に再度公開しました。
スノコ床板は ベッドを選ぶ時の最重要ポイント?
「スノコ床板は ベッドを選ぶ時の最重要ポイント」
とりわけネット上などで よく目にするフレーズです。
▲当店で人気のベッドフレーム。シャープなサイドフレーム、フットボードに無垢材を使用。
対面販売の専門店でも同じような説明をされているお店が 多いんじゃないかなあ と思います。
どういう意味でしょうか?
マットがカビになるのを防ぐから?
お客様から時々「スノコのほうが夏 涼しいから」と聞いたりすることもあります。
(実際はスノコに向かって冷風が積極的に吹き込んでくるわけではありませんので、これは間違い、というか単なる気のせいです(^^;)
スノコはスカスカ(?)していますので、「通気性」という意味では見た目的には納得しやすいですね。
ホテルのベッドはどーなっているのか
ところで皆さま、旅行や出張でホテルでの宿泊経験はたくさんあると思いますが、ホテルで使用されているベッドフレームをよくご覧になったことはございますか?
私は仕事柄、ホテルに宿泊したときはシーツを全て剥ぎ取って、マットとフレームのチェックを欠かしません。
ホテルの方にとってみたら、あまり良い客ではありませんね。ごめんなさい(^^;
で、
これまで スノコ床板を使用していたホテルに泊まったことはたった1回だけです。
(その時はどちらかというと低予算の宿でした)
当たり前ですがホテルは不特定多数の方が利用されます。
新陳代謝の良い元気なお子様だったり、汗っかきで体格の良いの外人さんだったりです。
スノコ床板は通気性が良いと思われるのに、採用しているホテルが僅かなのはどういう訳でしょうか?
マットのカビを防ぐには
マットにカビがはえる原因は、床板がスノコかそうでないかではなくて、実はマットの下面(身体が乗らないほうの面)の温度に因っています。
例えばマットをフローリングの上に直(じか)に敷いて寝ますと、特に冬など気温の低い時期は、新陳代謝が子どもに比べて低い大人でも数日でカビになることがあります。
これは一般的に床の温度がマットの内部の温度に比べて相対的に低いからです。
マットの中をゆっくりと下りてきた湿気(気体)は、冷たい床で冷やされているマットの下面に到達したときに水(液体・飽和水蒸気量に達する)になります。
一度液体になりますと、そう簡単には気体に戻りませんので、その水分がカビの温床となるのです。
つまり、カビを防ぐために大事なことはマットの下面の温度を下げないことです。
(なので例えば床暖房のお部屋に直にマットを敷いてお休みになった場合はカビの面では全然大丈夫です)
▲マットの下面(赤ラインの部分)の温度を下げないことが重要
わざわざ温めなくてもいいのですが、要するに冷たい床からなるべく離れた(高い)位置(と言っても20cmもあれば十分です)にマットを設置することだけで、カビは防げるのですね。
畳の上にお布団を敷きっぱなしにしても比較的カビになりにくいのは、畳面がフローリング面に比較して一般に温度が高いからに他なりません。
「お部屋が広く見える」「かっこいい」なんていうキャッチコピーで、床面高さが10cm程度の超ロータイプのベッドフレームがありますが、それこそマットの下面の温度が低くなりがちですので、このようなベッドフレームを使われるお客様はカビにご注意ください。
少し話が逸れますが床から30cmくらいまでの高さは花粉やホコリ、ダニのふんや死骸などのハウスダスト密度が非常に高くなっていますので、できればなるべく高い位置でおやすみ(呼吸して)いただくと呼吸器を痛めにくいですし、花粉症の方などにも良いです。
また、マットの外装はビニールで出来ているのではなくて ふつうは布製になっていますので、マットに座った瞬間にマット内の空気はほぼマット全面から放出されますし、寝返りを打つたびにマットが圧縮されたり解放されたりして、都度、換気されています。
このようにマット内の空気は 常に入れ替わっていて通常のご使用(特に吸放出性のよい天然繊維のシーツやパットを使用した場合)でしたらカビが発生するほど高湿になることは考えにくいです。
で、結局どっちがいいの?
話があっちこっちに行きましたが、個人的にはスノコ床板はあまり おススメしません。
一概にスノコといっても製品による優劣は結構激しいのですが、低いグレードのスノコは
- 強度が低い(薄っぺら)
- バリ(木目のささくれ)が出て
マットを傷つけることがある
(マットの生地を引っ掛けてしまう) - 灰汁(あく)が出てマットを汚すことがある
(一般にマットが黄色っぽく縞々になってしまいます) - 反りや割れの心配がある
など、特にネット上などではあまり説明されていないマイナス面が少なくないからです。
前述の「なぜホテルはスノコ床板のフレームを採用しないか」の答えは どうもこの辺にあるように思います。
▲丈夫な極太のLVL材を幅方向に渡したしっかりしたスノコ床板
一方、布張り床板(特に不織布で張ったもの)は上記のようなマイナス面がなく、マットがずれにくいといった優れた面も持っているのですね。
布を張ることで、マットとの接触面の温度を保ちやすいということもあります。
▲不織布張りの床板(防ダニ・抗菌加工済み)
私はもう25年くらい布張り床板のベッドフレームを使っていますが、一度もカビの経験はありません。
ということで結論を言いますと、
スノコ床板かどうかはベッドフレームをお選びになる際のキーポイントにはなりません。
スノコ床板が悪いという訳ではありませんが、たまたま気に入ったフレームがスノコ床板だったら、それはそれで良し という程度です。
スノコにしても、そうでない場合でも、重要なのは「強度」ですので その点はお店の人に良く聞いてご検討くださいね。
▲お布団で使える、桧無垢材のベッドフレーム。床板の下には建材でも使われる調湿材「炭八」を使用。
さて、
実はこの項は数年前に書いたブログをリファインしたものです。
皆さまがどの記事にご興味を持っていただいているか、WEBページの閲覧記録を追いかけますと、最近になって このスノコ床板の話がたくさんの方に読まれていることが分かりましたので、再度 アップさせていただきました。
今日は 久しぶりですが、今、熱い話題となっていそうなスノコ床板 VS 布張り床板 というお話でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
良い家具に巡り合えますように。
2024.3.10 インテリアコーディネーター(950487A) 小川登志洋